眠たい目を擦りながら、シンガポールからの早朝のフライトに乗り込んだ。
目的地は、ベトナム最大の経済都市であり、840万人が住む街・ホーチミン。
ベトナム革命を指導したベトナム建国の父であるホー・チ・ミンの名を持つ街。旧称はサイゴン。
2時間の短いフライトを終え、街に降り立つと、そこには朝とは全く違う世界が広がっていた。
匂い、音、景色、入ってくる情報が全て雑多だ。
シンガポールでの生活は東京での生活に近いものがある。
ともすれば、海外、東南アジアにいるということを忘れる瞬間がある。
しかし、ここで感じるモノは僕がイメージしている東南アジアであり、ベトナムである。
「あー、今東南アジアにいるんだ。」
仕事では一度足を踏み入れたことがあるが、プライベートで訪れるのは今回が初めて。
さて、どこに行こうか。
生々しい生活を感じる
シンガポールでよく使っている配車アプリGrabをベトナムでも使えるのはかなり便利だ。
昔は英語が通じないドライバーのおっちゃんに行き先を伝えるのが旅での最初の一大イベントだった。
それが今ではアプリでさっと行き先を指定すれば、メーターを気にすることなく、どこにでも行ける。
苦労しながら旅先を巡るという”醍醐味”が減った気もしないでもないが、簡単に安全に移動できるのは良いことなんだろう。
適当に指定した場所で降ろしてもらい、まずはベンタイン市場へ。
決して綺麗ではないし、匂いも生臭いし、ざわざわうるさい。
でも、市場はその国の生々しい生活の一部を見せてくれるのが好きだ。
生春巻きを頬張りながら、ゆるく売り込む店員と、今晩のおかずは何にしようかしらと悩むお客の様子をしばらくぼーっと眺めた。
靴磨きボーイズとの戦い
「少し歩き疲れたし、そろそろ一旦休憩しようかな。」
通りを歩いていて、飲み物を売っている売店が目に入ったので、ここで一服。
お店の前に置いてある小さな椅子に座り、通りを行き交う人、車、バイクを眺める。
カラフルなバイクがほろ酔いになった僕の目を楽しませてくれる。
「靴磨きしましょうか?」
ベトナム人男性2人が声を掛けてきた。
この旅の後には捨てようと思っていたボロボロの汚れた靴。
最後に綺麗にしてあげようかなと思い、靴磨きをお願いすることにした。
手際の良い作業。おーっと感心して眺めた。
これが間違いだった。
ビールのせいだ。ほろ酔いもあり、調子に乗ってお願いしたけど、捨てる予定の靴を磨いて何になる。
彼らは僕の予想の10倍以上の金額を提示してきた。
そこから彼らとのジェスチャーでの交渉試合が始まった。
「その金額はありえない」「いやいや」の繰り返しを続け、中々引き下がらない相手との試合に疲弊した僕は想定の5倍の値段で妥協した。
昨日友達が100円のために1時間交渉したと言っていたが、僕は時間を買った。
靴磨きボーイズとの長い戦いが終わった後、お店のおばちゃんが、
「最初に値段聞かないとダメだよー。あんたどこから来たんだい?」
いやいや、ピースなんてしてないで、見てたなら助けてよと心の中で思ったが、靴磨きの彼らにも生活があることを彼女は理解していたから、ただ傍観していたのだろう。
そこから何度も靴磨きセールスマンたちが声を掛けてきたが、華麗に無視させていただいた。
”西洋”が溶け込んでいる街
ホーチミンでは東南アジアを全力で楽しむことができるが、一方、「東洋のパリ」と呼ばれたフランス統治時代の面影が残る建造物、お洒落なカフェや雑貨屋が立ち並び、”西洋”や”モダン”も感じることができる。
西洋建造物を見た時に単純に綺麗だなと思い、写真に収めているだけの観光客が多いかもしれない。
しかし、そこには悲しい歴史が横たわっていることを忘れてはいけない。
これは東南アジアの多くの国で見られるケースだ。
歴史を正しく理解することは、その国へ敬意を示すことだと思う。理解すれば見方も変わってくる。
以前訪れたので今回は行かなかったが、戦争証跡博物館はホーチミンを訪れたのなら必ず行くべき場所。写真は少々グロいが、平和について考えさせられる。
想定外で溢れた街
あたりが暗くなってきた。晩御飯は何を食べようか。
「騒音規制って何?美味しいの?」と言わんばかりの、深夜爆音生ライブの音が街中に鳴り響いている。
そんな喧騒の中、フォーとベトナムビールでお腹を満たした。
歩いていると「何か聞こえませんか?今、あなたのせいで胸がドキドキしています。」と突然女性に愛の告白をされたり、バーで飲んでいると隣のベトナム人おじさんに更に隣の日本人女性を紹介し結婚を勧められたり、ベトナムは予想外で溢れている。
夜はまだまだ長い。
さて、どこに行こうか。
よしかつ(@4shikatsu)
この記事へのコメントはありません。